年度末に向け、「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)の締結にかかる準備を始める企業も多いかと思います。そこで今回は、36協定に特別条項を設けているケースで、36協定を遵守するための実務上の注意点をとり上げます。
[1]必要な手続き
時間外労働が限度時間である1ヶ月45時間を超えることが見込まれる等の理由から、特別条項を設ける場合、限度時間を超えて時間外労働をさせる際の手続きを定めて、36協定に記載する必要があります。
この手続きは、特別条項に該当する月ごとに行い、手続き方法は任意となっています。例えば「労使協議」とした場合、事前に従業員と会社で協議の場を設けることが求められ、「過半数代表者への申し入れ」とした場合、会社が従業員の過半数代表者へ事前に書面等で申し入れます。
[2]特別条項の適用回数の管理
特別条項を設ける場合であっても、上回ることができない労働時間数が設けられています。具体的には、以下の1から4のすべてを満たす必要があります。
※3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間
上記4については、1年のうち、最大6回しか適用できないため、6ヶ月は時間外労働を月45時間以内の36協定で定める時間に収めなければ、直ちに法違反となります。そのため、慢性的に時間外労働が月45時間等を超える見込みの場合は、時間外労働の削減に向けた取組みが早急に求められます
[3]複数月を平均した時間外労働時間数
例えば特別条項を1ヶ月90時間と締結しており、その月は90時間の範囲に収まっていたとしても、[2]の3のとおり2~6ヶ月平均で月80時間以内という基準があります。たとえば当月に90時間の時間外労働があった場合には、その翌月は70時間以内に収めることが求められます。単月の管理のみではなく、複数月の時間数の管理も必要になります。
また、この2~6ヶ月の平均は、36協定の期間にしばられることなく、前後の36協定の期間をまたいだ期間も適用されます。例えば、36協定を2022年4月1日から2023年3月31日までの1年間で締結している場合、2ヶ月平均は2022年4月と5月のみならず、2022年3月と4月でも確認します。
また、特別条項を適用した従業員に対して、会社は36協定に定めた健康福祉確保措置を実施し、この実施状況に関する記録を36協定の有効期間中および有効期間の満了後3年間保存する必要があります。実施した際には必ず記録を残しておきましょう。
■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制」
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/overtime.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。